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注)ここに書いてあることが原因でトラブルが発生しても、当方は責任は負いかねます。実践はご自身のご判断でお願いいたします。
ピンぼけフィルタを作っていたとき、光学カメラの感光剤が受けたエネルギーの量と感光反応の関係を勉強しよう思い、カメラ関係の本を探していたときに、右の二冊の本と出会いました。
(帰宅した後に見て気付いたのですが、どちらも著者は同じ方で、フォトグラファーの田所美惠子さんでした。)
どちらも針穴写真について書かれた入門書で、初心者や子供にも理解できるように易しく書かれています。
私にとっての針穴写真機は、小学3年生の時に作った、ケント紙でできたズーム可能なボディーと、明るい場所でも見られるファインダーフードを備えた硫酸紙のスクリーンという構造のものが最後で、以来、すっかり記憶の片隅に追いやられていました。
これらの本の著者の方がこの本の中で紹介している写真は、入門向けに平易な言葉で綴られている文章とは対照的な、どれも非常に高度な、言葉ではとても言い表せないほどの美しい作品です。
これほどまでに美しいスチル写真を針穴写真機で撮れるとは、想像もしていませんでした。
というわけで、再び好奇心をくすぐられ、自分でも試してみることにしました。
光と感光剤の反応の関係を直接体験するには、この針穴写真が最適のようです。
以下は、針穴写真機を作りながら書いたメモです。
本体の箱
光を通さない素材で作られた、密閉できる四角い箱なら何でも使えます。
ですが、穴を開ける作業がありますので、加工の難しい素材は避けた方が無難です。
身近にあるものとしては、木の箱やブリキ缶が手軽に扱えて良さそうです。私は無印良品で買った小さなブリキ缶を使いました。100円ショップ等にも使えそうな箱/缶がいろいろあります。
蓋が扉のように開く缶は、開閉機構の部分に僅かに隙間や穴があるため、密閉製・遮光性の点からベストチョイスとは言えません。
蓋と本体が完全に分離しているタイプの方が閉じたときの遮光性が高いため、針穴写真機には適しています。
針穴写真機は開けられた穴の反対側の面に上下左右が逆の像を結びます。
どの位置に像を結ばせるか(=どの位置に印画紙をセットするか)、どの位の大きさの写真を撮るかを考えて缶を選ぶ必要があります。
箱に穴を開ける
ブリキ缶本体に直径5ミリぐらいの穴を開けます。
針穴部分自体は別に用意しますので、ブリキ缶自身に開ける穴はこの位の大きさでも大丈夫です。
穴を開ける位置は、上下左右とも印画紙に対して中央となる位置が基本です。
上下に関しては、中央よりも少し上に開ける方が被写体の像が下がるため、アングル(ランドスケープ)によっては扱いやすくなります(位置に関してはこちらも参考にして下さい)。
開けた穴は、ヤスリなどを使って出来るだけバリを除去します。
穴を外側から見た図です。
穴を内側から見た図です。
針穴を作る
クッキング用などのアルミホイルを2センチ角ぐらいに切って、その中央に裁縫の針で小さな穴を開けます。穴の口径は 0.3〜0.5mm 程度です。
できるだけ整った丸い形の、しかもバリの少ない穴(といいますか...バリの形の良い穴)をあけます。何度かトライすると、良さそうな穴が作れます。
バリの形が悪かったり(不均一だったり)穴の形が丸くなかったりすると、不要な光の回折が発生したり、通過する光の量が角度によって変化してしまい、
印画紙を均一に感光させることができなくなります。
この針穴部分のアルミホイル小片を、ブリキ缶に開けた穴の上に黒のビニルテープなどを使って貼り付けます。
内面の塗装
内部の乱反射を防ぐために、ブリキ缶の内部を「つや消し黒」の塗料でペイントします。
つや消しの塗料でも、厚く塗ってしまうと、艶が出てきますので注意が必要です。
薄く一様に塗布することが肝心です(私は少し厚く塗ってしまい、一部テカらせてしまいました)。
このとき、針穴アルミホイル小片の内面も同時に黒く塗られます。針穴が目詰まりしないように注意が必要です。
レールを作る
印画紙を固定するためのレールを作ります。
割り箸などを適度な長さに切って、表面を黒く塗ります。
この割り箸をブリキ缶の内側の角の丸くなってい部分などに(両面テープなどを使って)固定します。
缶の角の丸くなっている部分に取り付けたり、割り箸の角を少しカットしたりして、印画紙の固定が楽にできるように工夫します。
台紙を作る
印画紙の台紙を作ります。
このレールに丁度収まる形のボール紙を作ります。
この紙は、印画紙をカットするときの台紙です。黒く塗る必要はありません。
注)型紙を作ってから、それに合わせてレールを固定する方が良いかもしれません。
シャッターを作る
針穴に入る光を遮る手動式シャッターを作ります。
2センチ角ぐらいに切ったボール紙の両面に黒いテープを貼り、さらに脱着用のテープを貼ります。
これで針穴を開閉してシャッターとします。
三脚固定用のネジ
三脚に固定するためのねじ穴(雌ネジ)を固定します。
長時間露出が必要な針穴写真機は、手持ちで撮影することは困難です。
ですので、何らかの台に置くか三脚に固定して撮影する事が基本となります。
大型カメラ店等で売られている三脚のネジの雌ネジ部品(1/4 インチ)を針穴写真機の底に取り付けます。私は両面テープで貼り付けました。
使用した雌ネジは、右側の袋に入っていました。
左側のタイプのものも木片等に埋め込めば、同様に使えそうです。
以上で工作は終了です。
必要なものは、概ね以下の通りです。
材料: | ブリキ缶 | | 道具: | つや消し黒の塗料 |
| アルミホイル | | | 黒のサインペン |
| 割り箸 | | | センターポンチ |
| 両面テープ | | | ハンマー |
| 黒のビニルテープ | | | ドリル |
| 黒の布テープ | | | ヤスリ |
| ボール紙 | | | ハサミ |
| 三脚固定用雌ネジ | | | カッター |
| | | | 裁縫針 |
針穴写真機の f/値は?
カメラの用語でよく出てくる「f/値」の定義とは、
「f/値」は 焦点距離÷レンズ開口部の口径
(焦点距離とは無限遠の被写体にピントが合っているときのレンズからフィルム面までの距離)
だそうです。
この定義に従うと、例えば今回作った針穴写真機は
- 開口部の口径:0.5mm
- 針穴から印画紙までの距離:75mm
という数値を持つ事から、f/値は150 となります。
感光素材は?
フィルムは感光感度が高く、短い露出時間で撮影できますが、装填・現像の扱いが難しいようです。
このため、私は印画紙を使いました(右図)。
印画紙はフィルムに比べて感度がかなり低く、ISO6 程度だそうです。
ISO6 という数字は、撮影の条件が同じ場合の ISO200 フィルムに対しては、6/200 倍感度が低いという事で、つまり 200/6 倍の露光時間か光の量が必要という事を示しています。
ですが感度が低いため、赤い電球(安全光電球)の暗室の中で装填や現像の作業ができて、これらの作業そのもののミスで失敗する事はまずありません。
また、像が浮かび上がってくる現像の瞬間を直接見ることができて、楽しいものがあります。
露出時間(シャッター速度)は?
まずは被写体の明るさを計測するところから始まります。
私の持っているデジカメ(FUJI Finepix4700)は、向けた被写体の明るさに応じてシャッター速度と絞り値(f/値)を表示する機能があります(右図の液晶表示内の下方)。
この機能を針穴写真機用の露出計として使用しました。
ですが、条件が違うため、針穴写真機用に数値を換算する必要があります。
パラメータは以下の通りです。求める露出時間は Sp です。
デジカメの想定する ISO 感度: | ISOd |
デジカメの示したシャッター速度: | Sd |
デジカメの示した f/値: | Fd |
針穴写真機の ISO 感度: | ISOp (=6) |
針穴写真機のシャッター速度: | Sp |
針穴写真機の f/値: | Fp (=印画紙までの距離/針穴口径) |
途中の式は割愛しますが、
Sp = (ISOd / ISOp) * 2(2*(log2·Fp - log2·Fd))
となります。
この計算を行う露出時間計算器はこちら(このページの最後)です。JavaScript で書きました。
仮に、ISO200 相当のデジカメで被写体に向けたとき
と表示されたなら(右上図の状態)、 5315 秒(約1時間28分)の露出時間という事になります。
しかし、実際にはフィルムや印画紙などの感光剤には「補正値」という誤差概念があるらしく、
露光時間が極端に長い場合は、計算値よりもさらに長い露光時間が必要になるそうです(場合によっては数倍とか)。
ですので、結局は何度か試行錯誤して、経験的に最適露出時間を知る事が必要のようです。
計算で出た数字は、目安程度の意味しか持たないという事です。
(これがわかった時点で、今回のテーマだった "光のエネルギーと感光現象の関係" の確認は「終了」しました。)
印画紙の装填
暗室で印画紙を装填します。
遮光性のある黒い紙をトイレの窓に黒いテープで貼り、暗室として使用しました。
天井の電球を右図の安全光電球(暗室用電球)に替えてあります。
この電球は明るさを2段階に変えられるものです。
明るいモードでも、もの凄く暗いですが、印画紙の装填や現像の作業には十分な明るさです。
この安全光の元で印画紙を袋から1枚とりだし、
あらかじめ作った台紙を型紙として印画紙の乳剤の塗ってある面の反対面(裏面)にあてがって、鉛筆等で軽く線を描きます。
その線に従ってハサミを入れ、必要なサイズの印画紙を作ります。
この裁断した1枚の印画紙をシャッターを閉じた針穴写真機に装填し、缶の蓋を閉じます。
さらにこの蓋を閉じた部分(蓋の合わせ目)に黒いテープを一回り巻いて、隙間から光が入らないようにします。
注)乳剤(感光材料)の塗ってある面は艶がありますので、赤い電球の元で判別できます。
乳剤の塗ってある面には手を振れないように、皮脂等をつけないように注意します。
私は室内の撮影には右図のような工事現場用の500W照明を使いました(普段デジカメで撮影するときは使用していません)。
この照明の元でも30分の露出時間が必要です。
室外の撮影では、日差しが十分にある場合は10数秒程度、日陰でも数分ですみます。
長時間の露光なので、安定した場所に置くか三脚に固定する必要があります。
ファインダーが無いのでアングル決めには「慣れ」が必要です。
方向は缶の向きです(ただし、これは針穴が「アオリ」の位置にない場合の話です)。画角は、中の印画紙の四隅と針穴の位置を結ぶ直線(四角錐)を想像して把握します。
方向と画角(針穴写真機と被写体との距離)が決まったらシャッターを開放します(手で取ります)。
同時にこの時の時刻を記録します。
露光時間が長い場合は、時計のアラーム等をセットしておくと間違いがなくて確実です。
そして、計算で出した露出時間(+補正時間)が経過したらシャッターを閉じます(手でシャッターを貼ります)。
シャッターの開閉時の一瞬のブレは、ほとんど結果に影響ありません。
薬品は3種類です。
私は濃縮タイプを使いました。
それぞれの薬品を水で希釈した溶液をタッパウェアに作ります。
厳密に希釈するためにはメスシリンダーが必要です。
私が使用した現像液(右図の左端の褐色の容器)は FUJIFILM の「スーパーコレクトールL2.5リットル用」 です。
これは 2250ml の水で希釈して 2.5 リットルの溶液にして使用するものです。
つまり 1:9 の比率で水と混ぜて使用します。
メスシリンダーの6分割されている目盛りを目安に...
水 | メスシリンダー | 5本 |
現像液 | メスシリンダー | 0本+3.3/6 |
私が使用した停止液(右図の右端の大きな白い容器)は FUJIFILM の「富士酢酸(50%)1リットル」です。
この停止液は 30ml を1リットルの水で希釈して使用するように指示されています。
つまり 1:33 の比率で水と混ぜて使用します。
同じくメスシリンダーの6分割されている目盛りを目安に...
水 | メスシリンダー | 5本+3/6 |
停止液 | メスシリンダー | 0本+1/6 |
私が使用した定着液(右図の中央の白い容器)は FUJIFILM の「フジフィックススーパーL・1リットル用」です。
これは 750ml の水で希釈し1リットルの溶液にして使用するものです。
つまり 1:3 の比率で水と混ぜて使用します。
さらに同じくメスシリンダーの6分割されている目盛りを目安に...
水 | メスシリンダー | 5本 |
定着液 | メスシリンダー | 1本+4/6 |
停止液は基本的には「食酢」と同じようなものなのですが、食酢と比べて酸が強いので、慎重に扱う必要があります。
(濃縮液が皮膚に付くと火傷をするらしいです)
現像液、定着液ももちろん慎重に扱う必要があります。
念のため、作業には手袋や防護眼鏡の使用をおすすめします。
順番や中身を間違えないように、タッパウェア本体とその蓋には番号を振っておきます。
また、先に輪ゴムを巻いた割り箸(印画紙の乳剤は非常にデリケートで剥がれやすいため、割り箸の先にはゴムを巻き、印画紙表面を保護します)をそれぞれの容器用に準備します。これにも目印を付けておきます。
薬品を作る(薄める)作業は普通の明るい通気の良い場所で行います。
薬液はおよそ摂氏18〜20度に保つ必要がありますが、あまり厳密でなくて良さそうです。私はいつも室温任せです。
アルコール式水温計も用意したのですが、結局使いませんでした。
希釈した現像液は、他の2つの薬品に比べて劣化が速く、現像した量に関係なく数日経つと褐色に変色します。暗い場所で保管しても同じです。
現像したときに起こった化学反応(と、溶け出した感光剤)が劣化の原因と思われます。
ほんの数日で褐色に変化し、使えなくなっている事があります。褐色になった現像液は現像する能力を失っています。
他の2つの希釈した薬品(停止液と定着液)はそれほど急激な劣化はなく、数週間経過してもまだ使えています。
こちらは処理した枚数に比例した劣化なのでしょうか。
撮影の終わった針穴写真機と薬品を、暗くした暗室に運び、安全光の元で針穴写真機の中の印画紙をとりだし、現像液に浸します。
右の図は "現像現場のイメージ映像" で、実際にはもっと暗く「微かに赤い光がある」という状態です。
印画紙の表面の乳剤を痛めないように縁を挟んで中で軽く揺すります。
単に現像液に浸して放置しておくだけですと、薬剤と乳剤の反応でできた液濃度のムラが、現像した絵にスジのような濃淡を作ってしまいます。
適正な露出の場合は、30秒〜1分ぐらいで像が黒く浮かび上がってきます。濃淡の具合が良いと思われるところで引き上げて停止液に移します。
過度な露光の場合は、10秒ぐらいするといきなり像が浮かび上がってきます。この場合、真っ黒になる前にさっさと引き上げて停止液に浸します。
適正な露出、不適正な露出は、最終的にはコントラストの良い写真、悪い写真になります。
露出不足の場合も露出過多な場合も、現像の作業である程度カバーできます。ですので、撮影時の露出時間を間違っていても、現像でなんとかなる場合があります(コントラストが悪くなりますが)。
停止液の中で20秒ぐらい揺すり、最後に定着液に移します。
定着液でしばらく揺すって、その後定着液に浸けたまま2分ほど放置します(私はこの時間に次の印画紙を針穴写真機に装填しました)。
暗室を明るくして、定着液の中の印画紙を取り出し十分に水洗いします。
これを乾かせば終了です。
現像の終わった印画紙はネガの状態です。
本来はこのネガをさらに別の印画紙と重ねて再露光・現像してポジ写真を作るのですが、結局、最終的にはイメージスキャナでコンピュータに取り込むので、ネガを直接スキャンしコンピュータに取り込み、Photoshop 上で左右反転と階調の反転を行いました。
注)私は印画紙にポストカードタイプのものを選びました(扱いやすいサイズですので)。
ですが、ポストカードタイプの印画紙には、あらかじめ裏面に切手枠とか郵便番号枠が印刷されており、ポジ焼きで光を透過させると、この切手枠等が影を落としてしまうため、実はポストカードタイプの印画紙ををネガに使う事はできません(ポストカードタイプの裏面が印刷済みであることは、開封後に気付きました)。
右は、様々な色を印刷した紙をデジカメで撮影した図です。
色に対する印画紙の反応やグレースケールの変化を確認するために作った、一種の簡易カラーチャートです(手前にある箱は撮影中の針穴写真機です)。
この同じ構図(本当は少し違います)の映像を、針穴写真機で撮影したものが右の図です。
最上段のグレースケールは、上のデジカメで撮影したものと同じように、なめらかに表現されている事がわかります。
水色系統が強く感光していることもわかります(上端のグレースケールを基準にして)。同じ事が、左端の連続スペクトルの部分からもわかります
緑系統の感光が弱いのは意外な感じです。
赤系統は、暗室の安全光電球に対して鈍感である(そのように感光剤が作られている)ことから、全く反応しないかと思っていたのですが、他の色と比べると暗いですが、少し感光している事がわかります。
R,G,B の三色のフィルタ(セロファン)を使って3度撮影し、後で着色加算合成すれば、結果的には針穴写真機と白黒印画紙でカラー撮影ができる事になりそうです。
これは面白そうなので、いつの日か実験してみるつもりです。
レンズカメラの場合、レンズの位置はフィルム面の対面の中央が基本です。意図的にフィルム面とレンズの位置をずらしたり、角度を変える操作を「アオリ」というそうです。
そのような操作ができる特殊なレンズが「シフトレンズ」、「ティルトレンズ」で、その機構を構造として持つ特殊なカメラが蛇腹や袋でできた胴体を持つ「ビューカメラ/モノレールカメラ」と呼ばれるものです。
レンズカメラの「アオリ」は、パースを逆補正(近似)したり、ピントの範囲をシャインプルフの法則に基づいて制御するときに用いられるテクニックだそうです。
一方、針穴写真機の針穴の位置も、レンズカメラと同様に基本的には印画紙の対面の中央です。
この針穴の位置をずらす事により、針穴写真機でも「アオリ」を行う事ができます。
一つではなく複数の針穴を作ってそれを被写体に応じて使い分ければ、このビューカメラと同じように手軽にパースを強く掛けたり補正したりする事ができます。
針穴写真機はどこにでも焦点が合いますから、針穴の位置を変えるだけでよく、ビューカメラの「レンズやフィルム面の角度を操作する」に相当する操作はありません。
注)厳密には、針穴には微少ながら面積がありますので、角度が変わると像も変化します。斜めに通過した光の方が、見かけの針穴口径が楕円に小さくなりますので、多少シャープな映像となります。ですが、光の量が減り、また印画紙までの距離が遠くなりますので結果として暗い像となります。
針穴写真機にはファインダーがありませんので、針穴が中央でない場合、ますます画角が把握しづらくなります。ですが、針穴と印画紙の四隅を結ぶ四角錐の範囲が撮影されるという事は、どこに穴があっても同じ事です。
この四角錐をイメージすれば、パースの掛かり方が概ね想像できます。
さらに発展させ、円筒等の変則的な形の缶を使って印画紙を変形させて撮影すると、通常のカメラでは得られない、違った効果が期待できて面白そうです(Photoshop でもできるのですが...)。
撮影に不可欠なものは印画紙、現像に不可欠なものは三つの薬品です。他にも細々必要なものがありますので、以下にまとめます。
ここに書いたメーカー以外のものも、色々あるようです。併記した金額は某大型カメラ店で購入した時のものです。
1 |
現像液 | FUJIFILM スーパーコレクトールL・2.5リットル用 | 305 円 |
2 |
停止液 | FUJIFILM 富士酢酸(50%)1リットル | 355 円 |
3 |
定着液 | FUJIFILM フジフィックススーパーL・1リットル用 | 270 円 |
4 |
メスシリンダー | 45ml | 370 円 |
5 |
暗室用電球 | 東芝暗室電球親子形 | 1,120 円 |
6 |
印画紙 | FUJIFILM フジブロマイド REMBRANT V 黒白ポストカード G2 25枚入り | 585 円 |
7 |
手袋1双 | | |
8 |
割り箸3膳 | | |
9 |
輪ゴム6本 | | |
10 |
水拭き取り用スポンジ | | |
超長時間露出で撮影するために、像は時間軸上で平滑化され、時間軸の空間周波数が高い被写体は写りません(時間軸上でぼやけます)。この現象は非常に興味深く、いつかは深くトライしてみたいです。
波打つ水面は鏡のように静まり、行き交う人は全く写らず、雑踏は単に像のコントラストを下げるだけです。
休日の昼の渋谷スクランブル交差点を、上からの視点で数時間露出で撮影したら、あの人混みや渋滞していた車は写らないでしょう。写るのはそこで止まっていた物だけです。
深い被写界深度を持ちそして時間をぼかすフィルタ・針穴写真機を通して見ると、普段目に付かなかったものが見えてきそうです。
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